Y様は、ご夫婦で入会していただいている会員様です。
お二人とも90歳を超えていますが、ご自宅で二人暮らし。
訪問介護、訪問看護などを利用しながら、病院受診や外出など介護保険外の部分はえにしの会で行うなど、連携をとりながらサポートをしていました。
あるとき、ご主人はご自宅で倒れ、そのまま息を引き取りました。
持病の心臓発作でした。
訪問看護にすぐに電話をくださり、駆けつけた看護師やわたしたちにもてきぱきと対応し、気丈にふるまっていた奥様。
お葬式が終わりしばらくしたとき、
「役所からの書類の書き方がわからないから教えてほしい」
と依頼があり、ご自宅に伺いました。
そのとき、奥様がぽつりぽつりとお話してくださいました。
得意だった料理は、ご主人のためだからリウマチで手が痛くても頑張れていたこと。
耳が悪く、ご主人がいないとチャイムの音も聞こえないこと。
実は手先が器用なのはご主人で、裁縫や細かい作業はぜんぶご主人がやっていたこと。
ご主人がいなくなってから、とても寂しく、何に対してもやる気が出ないこと。
私たちが見えていた部分以上に、心身ともに支えあって暮らしていたお二人でした。
「わたし、施設に入ろうと思うの。どうしたらいい?」
そうY様は続けました。
施設に入居されたことがなく、何から手を付けていいのか分からないとのこと。
ご希望を伺い、今後施設に入居するときの流れなどをご説明すると
「ありがとう。一人で心細かったの。けど、あなたたちがいてくれたら安心ね」
そういっていつもの元気な笑顔をみせてくれました。
これからも安心、信頼を感じていただける存在でありたいと強く思いました。
えにしの会の会員様の中には難病の方もいらっしゃいます。
契約時にはご自身でお話されたり意思表示をすることができていても、徐々に身体機能が
落ちていき、意思を伝えることが困難になってしまう方もいらっしゃいます。
意思表示が困難になってしまう前に、会員様の将来的なご意向を確認して、意に寄り添う
支援をするようにスタッフは心がけています。
今後も会員様のこころの声をしっかり受け止めていく努力をしていきたいと考えています。
A様は90歳。アパートの2階にお住まいでした。ヘルパーさんの支援を受けながら
住み慣れた環境での生活を希望されていたのです。
然しながら段々と2階への階段の上り下りが難しくなり、元来より耳が遠く、いざと言うときの
連絡手段に困る恐れが高くなったため、A様ご本人より施設入所の希望を頂きました。
施設選びも身元保証人であるえにしの会の大切な仕事です。
打ち合わせをしている際に「最後になるかもしれないので暫く会っていない妹に会いたい」
と、A様はポツリと漏らされました。
妹様の居場所もわからず、もとより耳の遠いA様は連絡が出来ない状態です。
ケアマネージャー様にお伺いした所、以前交流があった親戚の連絡先なら分かるとの事で
えにしの会がご親戚様へ連絡し、A様の現状をお伝えし面会の機会を作ることが出来ました。
A様も妹様もお身体の状況が思わしくなく、お互いに会いに行くことが困難になっており疎遠になっていたとのこと。久しぶりに妹様にお会いできたA様は大変喜んでおられました。
A様の妹様、親戚様にもえにしの会としてご挨拶させて頂き、ご家族様からも
「今後もA様の支援についてお願いします」と依頼されました。
A様ご本人様、ご家族様にとって最良の支援を今後も考えていこうと決意した一日となりました。「よろしくお願いします!」「・・・・・・・」
1番最初にお会いした時は口数の少ない方で、自ら話しかけて下さる事はあまりありませんでした。
施設へお迎えに行き自宅までご一緒し、その後は帰りの時間まで自宅のご自身のお部屋で過ごされます。
その間私は掃除等を行い夕方になったら施設にお連れする支援を週1回させて頂いております。
私も最初は緊張しており、それが伝わったのか上手くコミュニケーションを取る事が出来ませんでした。
しかし丁寧に、誠意を込めて接するという事を忘れずに大切にすることや、当たり前ですが挨拶を元気に笑顔で行うという事などを続けている内に自らお話しして頂く様になりました。
ご家族の話しや、施設での事、最近の天気の話しなどなんて事のない日常の会話等を話す時もあります。
今ではお迎えに行き元気に挨拶をすると冗談交じりに「またあんたね」と言われますが、以前には見られなかった笑顔で声をかけて頂いています。
自分が心掛けていた誠意を持って精一杯自分に出来る事を考え行うという事を今後も実施して、支援させて頂く方々の笑顔のきっかけの1つになれたらと思います。お一人で生活をされているT様。
介護保険の利用もなく元気に生活されていましたが、昨年少し首を痛めてから体の調子が悪くなり、外出など少し億劫になってきたとのこと。
普段からご自身の体調の変化や、困ったことなどがあれば直ぐに連絡いただけるT様。
そんなT様から「町内会の名簿作成で緊急連絡先が必要になったので記入に来て欲しい。他にも郵便が色々と来ているので一緒に確認して欲しい。」と連絡がありました。
ご自宅にお伺いするとコロナワクチン接種券や、神社からお札の申込書などが届いていました。
ワクチン予約は電話をしても繋がらなかったため困っていた様子。神社からのお札の申込も、以前までは直接参拝に行ってお札を頂いていたものが、コロナウイルスの影響で今年から郵送での申込となり、T様も勝手がわからず困っていたとのこと。
緊急連絡先記入後に、ワクチン予約は一緒にT様の携帯電話からインターネット予約を行い、神社のお札申し込みも一緒に書類を確認し申請を行いました。
支援が終わりT様から、
「いつもちょっとしたことでも相談に乗ってもらえて助かる。自分一人で出来たこともあるかもしれないが、一緒にしてもらうことで安心することができた。ありがとう。」
との言葉を頂きました。
会員様の支援をさせて頂く中で、不安に感じられる部分というのはお一人お一人違うというのを感じます。
これからもお一人お一人としっかり向き合い、その方の不安解消のお手伝いが少しでもできればと思います。普段、毎日何気ない生活を送っていますが、会員様の様々な変化を感じる毎日を送っています。
K様 76歳 男性。
以前脳出血を発症され、左片麻痺、構音障害。現在は有料老人ホームにてお元気に生活されています。
ある日、リハビリ専門のTVCMを観られ刺激を受けられたようで、すぐにご連絡を受けました。
「自分でお茶碗を持って食事がしたい!歩けるようになりたい!」と、とても意欲的になられすぐにリハビリ開始となりました。
そのリハビリはオーダーメイドリハビリになっていて施設と自宅でリハビリを組み合わせて効果を最大化するそうです。
週二回のリハビリをとても楽しみにされているK様。
毎回お迎えに伺うと目が輝いて待ち構えていらっしゃるように思えて私も元気をもらっています。
施設の職員さんからも「今日も頑張って行ってらっしゃい!」と見送られ、元気にリハビリセンターへと向かっています。
毎回支援させて頂いていますが笑顔を見る事が以前より多くなったように思えるようになりました。
無口な方ですが時折見せる穏やかな笑顔が…これもリハビリ効果なのでしょうか
支援する度に、何気ない仕草、言葉、表情の変化を拝見できる瞬間がとても私の励みになっています。
何気ない事の変化を感じる瞬間が…
今日も、皆様が毎日安心した生活が送れるよう寄り添い、会員様らしい生き方を家族代わりとして支援していきます。
マンションで一人暮らされている会員のY様は、お体は比較的お元気で買い物や病院等への通院などもおひとりで対応されていました。ただ、聴力が弱く、電話や玄関のチャイムが聞こえず、定期的な訪問や連絡の際にすれ違ってしまうことや電話でのやり取りが難しいことも多く、見守りなどに不安を感じていました。
ある日、マンションの敷地内で転倒されているところを管理事務所の方が発見していただき自宅まで送っていただきましたが、その後様子確認のため部屋を訪問された際、チャイムが聞こえず、反応できなかった結果、安否確認のために消防署により窓を破損し居室内に入り安否を確認されたという事がありました。
両耳の聴覚をほぼ失っておられ、お一人暮らしでの生活のなかで、連絡や安否確認をどのようにしていくか、とても大きな課題が浮き彫りになった瞬間でした。
毎日訪問することもむずかしく・・・
いろいろ考えた末に一つの方法を提案することにしました。
それはスマートフォン(以下、スマホ)を使ったLINEアプリでのやりとりです。
ただ、これまでYさまは、スマートフォンはおろか、携帯電話すら使用したことがなかったのです。
好き嫌いがはっきりした方なので拒否反応も覚悟してご提案したところ
「すぐに購入しよう!」という前向きなお返事をいただきました。
携帯ショップへの同行、購入、操作に慣れていただくための支援は試行錯誤でした
最初は、LINE起動や文字入力に大変戸惑っていらっしゃいましたが、
一週間で、音声入力を取得され、
三週間で、文字入力を・・・
今では、漢字変換もほぼ完璧に取得され、冗談もLINEで返信できるようになられました。
Yさまの不屈のチャレンジ精神と努力のおかげで、私達との連絡や安否確認、ケアマネージャー様とのやりとり等も問題なくコミュニケーションをとる環境を構築できました。
すぐに諦めてしまい、スマホを解約したいと仰るのではないか、と不安に思っていた私ですが、Yさまのチャレンジ精神に励まされこのような環境が整えられました。
私達、支援員の仕事は、「会員さまの抱える課題や目標に向かって、会員様と一緒にどのように最良の答えをみつけることができるのか」なのではと感じています。
会員様と一緒に課題を乗り越えた時の喜びは絶大で、ほっこりしてしまう
そんな仕事なのだと思っております。
Kさんは93才の女性で、ご自宅で1人暮らしをしています。
歩行など多少の介助が必要ですが、ほとんどのことをご自分で行えます。
93才とは思えない程、記憶力も判断力も健在で、私が憧れる女性の1人です。
ある日Kさんから公正証書遺言の変更をしたいと話がありました。
Kさんにはご家族はおらず、ご自分の財産は友人の息子であるA氏に渡したいというご意向があり、
すでに公正証書遺言を残していました。
変更したい部分は、自宅マンションをそのままA氏に相続させる点と、祭祀継承者としてA氏を指定している点。
これらがA氏に負担をかけてしまうのではないかと心配になったということでした。
自宅マンションは遺言執行者である司法書士が売却し、現金化したうえで相続させること、祭祀継承者
についての項目は削除するという変更を行いました。
私も証人となり公証役場に立ち会い、無事に新しい公正証書遺言を作成することができました。
その後えにしの会と、葬儀と納骨の追加契約を行ない、Kさんの死後の全てをえにしの会が
お手伝いさせていただくことになりました。
亡くなった際に連絡して欲しいご友人の確認や、ご自宅の家財処分の見積と費用のお預かりも
既に済ませてありますので、これでKさんの終活が一区切りついたことになります。
全ての手続きが終わった時にKさんは「これでいつでも死ねるわ」と笑顔で話されました。
Kさんはいつも穏やかで、不安や不満といった心の内を語らない方でしたので、この時に見せてくれた
心底ほっとしたような笑顔がとても印象的でした。
Kさんのお役に立つことができてとても嬉しかったです。
終活は終えましたが、これからもKさんへの支援は続きます。
今後も健やかに過ごしていけるようサポートができる存在でありたいと思っています。
日々会員様の様々な支援をさせていただいておりますが、日頃のやりとりの中で信頼いただけた事を実感した事例です。
O様は90代の男性で白内障の手術で入院しました。
退院後の受診時に患部の状況から即日の入院が必要との診断がされ、翌日に入居されている施設から車で1時間半の距離にある大学病院に再度入院されました。
日頃から受診のお手伝いをさせていただいておりましたが、O様は言葉も少なく受診での長い往復の時間は私からのお声掛けが殆どでした。
お食事はご本人の嚥下状況を鑑み施設へも確認しお好みのサンドイッチ等を車中で召し上がっていただきました。食事の度に「美味しいね~」と嬉しそうに召し上がっていただいておりました。
入院中お体の状況にも変化があり入院期間は想定より長く1カ月半程になってしまいましたが通院する事を前提に無事退院されました。
ところが戻られてから数日後、施設からO様が服薬を拒否されているとの連絡がありました。
翌々日別件でお会いする約束をしていた為、その時に時間をかけ本人のお考えをしっかりお聞きし私の考え・思いをお伝えした所「今日からまたやってみる」との事で、ご自身でも納得しその日はお戻りになりました。
翌日施設の方に伺うと「拒否なく服薬されていましたよ、すごいですね」との言葉をいただきました。
ご家族のいないO様にとって、僅かではありますが家族代わりになれたかな、と思えた瞬間でした。
知識や経験を積み、会員様のお考えやそのご家族のお考えを踏まえどういう行動がベストか、日頃からのサポートがいかに大切か、支援員として改めて考えさせていただく機会になりました。
F様の支援をさせていただいたきっかけは、入院中の病院様からのご相談でした。
F様は末期の癌を患っており、弊会にご入会していただいた段階で余命幾許もない状況でした。F様は責任感のとても強い方で、自分が亡くなった後の事をとても心配されており、
『賃貸アパートの解約は誰がするのか』『葬儀はどうするのか』『死後の手続きは』『大家さんへの連絡』『NHKの解約は』など、周りの方に迷惑をかけたくないと強く希望されていました。
その中でも特に気にされていたのは、遠方に住む妹様の事でした。何十年も会っておらず、疎遠になっていたようですが、亡くなる直前まで妹様の事を気にかけており、F様にとってかけがえのない存在で心の拠り所になっていたのだと思います。
F様がご心配されていた点に関しては、私たちが家族代わりとなり、責任を持って対応しますとお伝えし、F様は安心して天国へ旅立たれました。
F様ご逝去後、葬儀は弊会で喪主を務め、賃貸解約やライフラインの停止、関係各所へ連絡等、死後手続きをF様の生前のご意向に沿って行いました。
また、協力弁護士の支援で妹様と連絡が取れたことにより、無事にF様の遺産を引き継ぐことができました。妹様もF様をご心配されていたようで、お二人の想いを繋ぐことができて私共も嬉しく思いました。
今後も、皆様に寄り添った支援に努めて参ります。