身元保証人について

身元保証人の役割とは?
頼る人がいない場合の対処法

病院に入院するときや、会社に就職するときに身元保証書の提出を求められることがあります。
高齢者は介護施設の入居時に身元保証人が必要になる場合もあります。
しかし、家族や親族に頼れる人がいない方もいるでしょう。
何らかの理由で身元保証人になることを頼めない方もいます。
そのようなときはどのように対処すればいいでしょうか。
本コラムでは身元保証人が必要となるシーンや頼れる人がいないときの対処法、身元保証サービスなどを解説します。
身元保証人とは
身元保証人とは身元を保証する人です。雇用契約時に損害担保を目的として会社から身元保証書の提出が求められます。また、身元保証人は身元保証書によって損害担保だけでなく信用のある人物として保証する意味もあります。
雇用契約時以外で身元保証人が必要とされるタイミングは、病院への入院や介護施設への入居時点です。本人が入院費用や入居費用を支払えなくなったときは身元保証人が損害を担保しなければなりません。
身元引受人と明確に区別されていない
身元保証人ではなく身元引受人という言葉を聞いたことがあるかもしれません。身元保証人と身元引受人は明確に区別されておらず、責任の範囲は施設ごとに異なるため注意してください。
ただし、身元引受人という言葉は法的に使われる用語ではありません。
身元引受人は「医療・介護施設を退所するときに、引き受ける責任がある人物」という意味で多用されています。
本コラムでは身元保証人に焦点を当てて解説します。
身元保証人と連帯保証人は責任の範囲が異なる
連帯保証人という言葉が使われることもありますが、身元保証人と連帯保証人が負う責任の範囲は異なります。身元保証人は被保証人が何らかの損害を発生させても、賠償しなければならない範囲は限定的です。身元保証人が100%の損害賠償責任を負うことはありません。
一方で、連帯保証人は被保証人が発生させた損害をすべて賠償しなければなりません。民法446条により連帯保証人の義務として定められています。
身元保証人と後見人は権限や効力が異なる
後見人は、何らかの理由で判断能力がなくなった被後見人に適用される制度です。なお、後見人は被後見人の財産をどのように使うか決めることができます。ただし、被後見人の死亡と共に後見は終了するため、後見人は死後事務を行うことはできません。
身元保証人が被保証人の財産を管理すれば、後見人によって財産が勝手に使われることはありません。また、身元保証人は死後事務ができるため、死後の手続きがスムーズに進みます。
高齢者が身元保証人を必要とするシーン
高齢者が身元保証人を必要とするシーンは主に3つ挙げられます。
ここからはそれぞれの具体的な内容や、身元保証人に求められる責任の範囲などを解説します。
①入院時に病院から求められたとき
多くの医療機関は、入院時に身元保証人を求めます。厚生労働省研究班による研究では、6割を超える医療機関が身元保証人を必要としている結果が出ています。なかには身元保証人いないと入院が認められない医療機関もあるようです。
では、身元保証人は医療機関にどのような責任を負うのでしょうか。代表的な役割は入院費の支払い保証と緊急連絡先です。本人に支払い能力がなければ身元保証人が保証します。急変などが発生したら、医療機関は身元保証人に連絡します。
また、本人による意思決定が確認できない状態であれば、治療方針の判断も求められるでしょう。

参考:山縣然太朗「医療現場における成年後見制度への理解及び病院が身元保証人に求める役割等の実態把握に関する研究 平成29年度 総括・分担研究報告書
②介護施設に入居するとき
介護施設へ入居する際にも身元保証人が必要です。身元保証人は基本的に1人ですが、身元保証人と連帯保証人を1人ずつ決めなければならない施設もあります。保証人の種類や人数はあらかじめ確認しておきましょう。

介護施設において身元保証人に求められる役割は主に緊急連絡先や治療の際の手続き、月額費用の保証です。
施設利用時に体調が悪くなった場合、施設は身元保証人に連絡します。その後の医療機関とのやり取りや、入院等の手続きも身元保証人です。
さらに、被保証人が月額費用を滞納した場合、身元保証人が本人の代わりに支払います。
③亡くなったとき
被保証人が病院や介護施設等で亡くなったとき、身元保証人が遺体を引き取ります。その後、葬儀の準備やさまざまな事務手続きも行います。
介護施設に入居していた場合、退去手続きも行わなければなりません。未払い料金があれば精算し、部屋の片付けや遺品の引き取り作業も担います。
以上のように、身元保証人になる人は多くの役割を担い、そして重大な責任を負います。そのため、あらかじめ役割・責任を知っておくことが大切です。
身元保証人がいない・頼めない高齢者の問題
人生の重大な局面で必要とされる身元保証人。しかし、身寄りがなくて身元保証人がいない、家族や親族に頼めないといった問題を抱えている方もいます。
その結果、介護施設に入れないといった事態に陥る可能性があります。
一人暮らしの高齢者の増加
近年、ひとり暮らしの高齢者は増加しています。内閣府の「令和元年版高齢社会白書」によると、65歳以上のひとり暮らしは2015年には男性で約192万人、女性で約400万人に到達しています。

高齢者のひとり暮らしは今後も増加することが予想されており、決して無視できない問題です。また、ひとり暮らしの高齢者が増えることで、身寄りがなくて身元保証人を立てることのできない人も増加する傾向にあると推測できます。

参考:内閣府「令和3年版高齢社会白書

家族がいても頼みづらい
身元保証人を引き受けてくれそうな家族や親族がいるものの、頼みづらいと感じる方もいるでしょう。「仕事をしており忙しい家族に迷惑をかけたくない」「遠くに住んでいる家族が急に呼び出されるのは気が引ける」といった方もいます。
身元保証人はいろいろな責任を伴うため、血のつながらない友人や知人にはより頼みづらくなるでしょう。その結果、多くの高齢者が身元保証人を立てることができずに困っています。
身元保証人がいない場合の対処法
身元保証人がいないからといって必ずしも入院や入居を諦めなければいけないわけではありません。ここからは2つの対処法をご紹介します。
身元保証人がいらない介護施設を探す
保証人がいらない高齢者向けの賃貸住宅を運営している企業もあります。また、成年後見人がいれば入居が認められる介護施設もあります。
ただし、このような施設はまだまだ少なく、入居できる施設を見つけるまでには時間や手間がかかるでしょう。
身元保証サービスを利用する
身元保証サービスというものが存在します。入院時に身元保証人が見つからないことを不安に思っている方や、介護施設に入りたいと考えている方は利用を検討してみてください。詳しいサービス内容やメリットなどは後述します。
身元保証サービスとは
身元保証サービスとは身元保証人を代行する団体によって提供されるサービスです。サービスの内容や料金などは運営元の企業・団体によって大きく異なります。サービス内容によっては専門家と連携しながら財産管理や葬儀の手配まで行われます。身元保証サービスの主な形態は以下の3種類です。
営利を目的としない一般社団法人
一般社団法人とは2人以上の社員がいる非営利団体です。ただし、非営利といってもボランティア団体ではありません。一定の範囲内で事業を展開しており、さまざまなシステム・料金設定のサービスがあります。
社会貢献活動を行うNPO法人
NPO法人は社会貢献活動を目的とする特定非営利活動法人です。多くの場合、身元保証人サービスの内容を限定的にすることで他の団体よりも低い料金を実現しています。そのため、費用を抑えることができるでしょう。
オプションが多様な株式会社
株式会社は多種多様なオプションを提供しており、システムも多岐にわたります。直接身元保証を行わず、本人の代わりに身元保証人を用意する会社も存在します。ただし、営利目的でもあるため、信頼できる会社かどうかしっかりと見極めなければいけません。
身元保証サービスを利用するメリット
身元保証サービスを利用する前に利用するメリットを知っておきましょう。主な2つのメリットを詳しく解説します。
身元保証人がいなくならない
多くの場合、家族や親族、知人などが身元保証人になります。しかし、個人が身元保証人になると、引越しなどをきっかけに疎遠になるかもしれません。亡くなったときに連絡がつかず遺体の引取先がいなくなるといったトラブルもあります。一方で、身元保証サービスを利用すれば突然連絡がつかなくなる心配はありません。急な傷病が発生したときでも身元保証サービスがすぐに対応します。
気を遣わずに依頼できる
身近な人に身元保証人を頼みにくい方でも、身元保証サービスを利用すれば周囲に気を遣う必要がありません。対価として費用を支払って利用するため、申し訳なさを感じることもないでしょう。また、基本的には断られることもありません。「身元保証人不在により入院や施設への入居ができないかもしれない」と不安に思っている方にとって身元保証サービスはとても心強い存在です。
身元保証サービスを利用する際の注意点
メリットの多い身元保証サービスですが、利用する際に注意すべきこともあります。サービスの運営者が株式会社である場合、会社が倒産する可能性もあることを覚えておきましょう。また、悪質な会社と契約してしまったことによるトラブルも発生しています。そのため、契約する会社や団体の信頼性はしっかりと見極めてください。1人で決める自信がなければ家族や知人とも相談しましょう。契約内容や料金を詳細に確認することも大切です。
身元保証サービスなら一般社団法人えにしの会
身寄りがなくて身元保証人がいない方や、高齢な親が遠方に住んでおり緊急時に対応できない方は身元保証サービスの活用を検討しましょう。身元保証サービスを利用すれば、緊急搬送されたときや施設に入居したいときでも手続きがスムーズに進みます。 一般社団法人えにしの会にご相談いただければ、ご家族の代わりにトータルサポートを行います。お気軽にお問い合わせください。